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スクラムネット メールマガジン
- Date: Fri, 12 Apr 2013 18:00:00 +0900 (JST)
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メールマガジン スクラムネット No.11
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【配信元】福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
春になりました。4月です。入園、入学、新社会人と、新たな環境でスタート
した方も多いと思います。感動ふくらむ出会いが多いこの季節、皆さんの活
躍を期待しています。
それではメールマガジンスクラムネット、11回目のリレーエッセイは 福井
県立大学学術教養センター教授 清水聡先生よりお送りさせていただきま
す。
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【リレーエッセイ第11回】
福井県立大学学術教養センター 教授
福井大学子どものこころの発達研究センター 客員教授
清水 聡
福井県立大学の清水聡と申します。福井大学の安倍先生のご指名でこの
エッセーを書くことになりました。よろしくお願いいたします。私の学内での所
属は「学術教養センター」です。この学術教養センターというのは、一昔前
の「教養部」という部局で、全学の学生を対象にいわゆる一般教養科目を教
えるところです。県立大学では一般教養科目を高学年の学生さんにも受講
することを推奨しているのですが、実際の受講生は1年生が多いです。「心
理学」や「人間関係論」といった科目を大教室で教えています。発達障害に
関しては、これも1年生対象の入門的なゼミで教える程度で、学内で専門的
な講義やゼミを行ったり、卒論研究の指導を行うことは今のポジションでは
ありません。ですから、研究であるとか、専門分野の講義とかいったものは
学外で行うことが多いです。
さて、前回の安部先生の文章中にもあったように、私は「クローバーの会」
という高機能型の自閉症スペクトラムの当事者や保護者の方の会を運営し
ています。正式名称は「福井アスペの会」といいまして、平成12年に当時県
立小児療育センターにおられた小児科医の平谷美智夫先生が外来で診て
おられた患者さんの支援組織として立ち上げられた会です。平谷先生が独
立されてご自身のクリニック「平谷こども発達クリニック」を翌年に設立され
ることになってご多忙だということで、私が2代目の代表となって現在に至っ
ています。
アスペの会の「アスペ」とは、もちろん「アスペルガー症候群」からきていて
、名古屋にあるこの手の集まりの魁けである「アスペ・エルデの会」に倣っ
て命名されました。福井アスペの会(クローバーの会)は、当事者の会員は
50人程度です。本会は知的に遅れのない(IQ70以上)の自閉症スペクトラ
ム(アスペルガー症候群や高機能自閉症)の方のための団体です、当事者
の年齢は、「高機能型」ということがはっきりする年長児以上の方としていま
す。
50人程度が登録はしていますが、月1回の定例活動に参加するのは、高
校生までです。毎月第3日曜が活動日で、年齢や性別に応じて5つのグルー
プで活動しています。今年度の活動グループは年齢が下の方から、小学生
男子グループ、小学生女子グループ(ガールズ4)、中学1、2年生男子グル
ープ、中学3年生以上男子グループ、中学・高校生女子グループ(乙女グ
ループ)の5つです。その他に、高校を卒業して大学に行ったり就職している
成人のグループ(彼らが中学生の時に結成したグループなので「少年同盟
」といいます)がありますが、このグループは他のグループとは違って、平日
の夜に活動しています。
月1回の定例活動を行いだしたのは平成14年からで、既に10年以上が経
過しました。グループを運営して、長期的に同じ子どもたちと関わってきて思
うのは、小グループを継続することの意義です。良好な対人関係を維持す
るのが難しい彼らにとって、通常(=定型発達)の人たちの集団でペースを
合わせながら生活するのはとても大変なことであり、その中で友人を作るこ
とはなかなかできることではありません。その中で他の子どもたちとトラブル
を起こしたり、いじめに遭ったり、勉強でつまずいたりと、自尊心を下げる要
因はたくさんあります。そのような状況にある子どもたちにとって、福井アス
ペの会のような当事者の集まりは何ができるでしょうか?何をおいてもそこ
へ行きたいと願う場所、そこで集えば楽しみがあり、友人を意識できる場所
、といったところが集団生活上のスキル獲得以上に本人の安定した生活を
支える上で大切なんだと思います。生きにくい「定型さん」の集団では頑張
って、本会のようなところでリラックスした人間関係を楽しむといった、使い
分けをしながら彼らは生きていくんだなと思います。
当事者会を長く続けていると、会の発足当時には中学生だった子どもたち
が、今では大学生や社会人です。あるいは高校生活も終盤にさしかかって
、卒業後の進路を考えなくてはいけなくなった親御さんが会の中にも増えて
きました。そのため、平成24年度は就労をテーマにした保護者の勉強会を
スクラム福井の職員の方をお招きして行いました。親御さんの反応は上々
で、勉強会の続きで、就労に向けて自発的に勉強会を続けていこうというこ
とになりました。ちゃんと就労できるのだろうか、就労したのはよいが続けて
いけるだろうか、成人期の生活はどんなだろう、親亡き後の生活自立に向
けてグループホームを作るとしたらどんな準備が必要なのだろう、様々なこ
とに対する準備のための知識獲得をしていこうというものです。
このように発達障害への支援というのは本当に終わりがないです。発達の
一つの段階での課題をクリアするのにもかなりエネルギーがいるのに、そ
れを乗り越えたと思ったら次にはまた新たな課題が登場して、今度はそれ
に立ち向かわなければいけない、といったことの繰り返しです。最近では支
援のゴールが就労ではなくてまだ先にまであるのだと実感するようになって
います。支援する立場としては、その状況ごとに適切と思える解決案を提案
していくのですが、同時に、親御さんがくじけないように励まし続けることも
求められるのだと思います。長期的な見通しを示しながら、親御さんの今や
っていることは間違っていない、あるいは少し修正すればそれでよいという
ことを言い続けるわけです。それを個別のカウンセリングという形で行うこと
もあれば、同じタイプのお子さんを持つ親御さん同士で支え合う仕組みを作
る(これはつまりクローバーの会でしょう)という方法でもやっています。その
ほか考え出すと様々な仕組みを作らなくてはいけなくなって、大変です。も
ちろん一人ですべてできるわけではありませんから、既存の社会資源の助
けを借り、高機能型の発達障害の方に合うように修正しながらやる。また、
同好の人たちと新しい仕組みを作って、発達障害の方が生きやすい世の中
を作ることに少しでも貢献できれば、というのが今の私の願いです。
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【保育士のための事例で考える発達障害児へのワンポイント】
続いてお送りするのは保育士のための事例で考える発達障害児へのワン
ポイントです。園でのいろいろな活動のなかで、保育士さんたちが気がかり
になることも多いと思います。具体的な支援法を身につけるために、さまざ
まな事例を学習して取り込んでいくことも大切です。以下事例を参考に、少
しでもお役にたてていただければと思います。
Q:発達障害の診断を受けられている5歳の男の子で、ものづくりの時間の
ことです。テーマを決めてつくり始めるという流れなのですが、まわりがつく
り始めても何もせず座っていたり、別の遊びを始めることがあります。どうす
ればいいでしょうか?
A:クラス全体でものづくりをする時間にまわりがつくり始めても何も手を動
かさず座っている子がいるのは先生としては気になりますね。また別の遊
びを始められるとその動きに気を取られてクラス全体を把握することが難し
いことと思います。今回ご相談いただいた内容については、他の園の先生
からもよくご質問があります。担任の先生がお1人でクラス全体を把握し、
丁寧に対応することは本当に難しいとは思うのですが、小学校や中学校、
高校、大人の発達障害のある方とお話する中で、場面は違うのですが、似
たような場面や状況で困ったという経験や理由についてお聞きすると次のよ
うな理由を話されます。
1.テーマ(何をつくればよいのか)を自分で決められない
2.つくりたいものがあるけどつくり方がわからない
3.上手くできない工程があったり、道具を上手く使えない
といった内容です。3点だけでなく、他には「まわりが騒がしく集中できない
」という方もおられました。
今回ご相談いただいた5歳のお子さんも同じような理由からそのような行
動になっているのかもしれません。その場合、少し先生にサポートをお願い
できればと思います。次の内容も上記の点と併せて実際にしてほしいサポ
ートとしてお聞きした内容になります。
1.について:決められるようヒントを出したり、先生がテーマを決める。
2.について:つくりたいものの手順や工程を一緒に考えたり、提示する。
3.について:上手くできない工程があれば手伝ったり、その工程のみ先生
が行う
今回は少し年齢を重ねた方からお聞きした例をあげさせていただきました
。5歳のお子さんに「何に困っているのか」を言葉で教えてもらうことはなか
なか難しいものです。ものづくりの時間だけでなく、他の活動や場面でも同
じような行動をされるお子さんを見かけることがあります。その場合、同じよ
うな内容で困っていることもありますので、お子さんの様子を見守りながら、
色んな方法を試していただければと思います。
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【情報・話題提供】
福祉サービスには就労移行支援事業などといった「訓練等給付」のほかに
、生活介護や行動援護といった「介護給付」のサービスもあります。
発達障害の特性から「家事ができない」という方が居宅介護サービスを利
用し、ヘルパーの手を借りることもあります。
今回は居宅介護事業所である 訪問介護まごのて福井 林様 より機関
のご紹介がございます。
私たち、まごのてグループ株式会社は訪問介護を中心とした企業です。
様々なお客様のご自宅に訪問させていただき生活支援を行っています。
主な内容はお客様の状況によって様々ございますが障害者総合支援法
と介護保険法の2種類の制度があり、それに基づくサービスがございます。
身体介護・生活援助・移動支援(地域生活支援事業)・通院介助・重度訪
問介護・行動援護等の様々な支援内容を担っています。
弊社まごのてグループ株式会社では介護技術や知識・法制度、また直接
仕事に関わるコミュニケーション・メンタルケア等についても月に1度の勉強
会を行い、職員の様々な悩みを職員一同で考え解決しています。その他、
職員には様々な各社主催によるセミナーや研修に参加して頂き、個人のス
キルアップはもちろんの事、その報告を自社の勉強会の講師として発言し
他社員のスキルも上げていってもらっています。
社員の気持ちを会社がわかる企業として、まごのてでは「自身の仕事の悩
みを抱え込まない」企業としてもそのように努めています。
企業理念として「すべての人々が豊かで幸せになること」を掲げ、社員・お
客様・家族はもちろんの事、すべての人々が豊かで幸せになる事への貢献
。「公の人材を用い、公の仕事をし、公から報酬を頂いている」営利法人で
あるも私利私欲に惑わされる事なく公に貢献する。またすべての人にとって
「一生付き合いたい会社」であることを過程にすべての人々に感動と幸せを
運び「愛し愛される企業」として取り組んでいます。
私たちまごのてグループ株式会社は、「にんげん」をテーマに企業してい
く事を重視し、障がい者の方、また高齢者の方々を「利用者ではなくお客様
」であると位置付け、本来の介護サービス以上のサービスを提供し継続して
いけるように、様々な研修や勉強会を会社をあげて取り組んでいます。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
訪問介護まごのて福井
福井市丸山1-208 リリーフ21日経ビル5F
? 0776-97-5234 担当 林
http://www.self-support.jp/
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【セミナー・研修会などの案内】
それでは今年度開催予定のセミナー・研修会予定の情報についてお知らせ
いたします。
○「発達障害の支援者の育成のための実践事業」
主催:NPO法人AOZORA福井
日時:平成25年5月12日(日) 13:30〜16:30(今後も毎月1回開催予定)
場所:ハートピア春江2F YURI情報室
参加費:1回500円
講師:小栗正幸先生(宇治フロンティア大学臨床教授、特別支援教育士ス
ーパーバイザー)
お問合わせは NPO法人AOZORA福井 まで
0776-51-6547
○ちち☆ははサポートクラブ
スクラム福井では、発達障害のお子さんを育てられている親御さんたちの
集まりを定期的に開催いたしております。日ごろのお子さんの様子や子育
ての悩み、保育所や学校のことなどを語り合う場を提供し、親御さんの仲間
づくりのお手伝いができれば・・・と思っています。
主催:福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
5月10日(金):敦賀(あいあい)
5月15日(水):福井(県図書館)
5月16日(木):大野(スクラム奥越事務所)
7月4日(木):勝山(すこやか)
7月5日(金):敦賀(あいあい)
7月10日(水):福井(県図書館)
9月4日(水):福井(県図書館)
9月12日(木):大野(スクラム奥越事務所)
9月13日(金):敦賀(あいあい)
各会場とも10:00〜12:00までのお時間となります。
(大野開催時のみ10:00〜16:30のフリータイム制となっております)
※詳しくは スクラム福井HP ちち☆ははサポートクラブ をごらんください
。
○PECSレベル1ワークショップ(ベーシック)
主催:ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン株式会社
日時:平成25年6月22日(土)・23日(日)
場所:福井県中小企業産業大学校
講師:峯勇人(コンサルタント)
対象者:保護者や医師・教員など専門職者
基本料金:39000円
お問合わせは ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン株式会社 まで
093-581-8985
※詳しくは スクラム福井HP 他機関の研修会のご案内 をごらんください
。
○「福井ADHD国際シンポジウム」
主催:福井大学子どものこころの発達研究センター
日時:平成25年6月27日(木) 18:00〜20:00
場所:AOSSAビル6階607研修室
演者:Dr.Bung-Nyun Kim(ソウル大学児童青年期医学教室准教授)
演者:Dr.Martin H Teicher(ハーバード大学精神医学教室准教授)
座長:友田明美(福井大学子どものこころの発達研究センター教授)
入場無料・要申込
お問合わせは 福井大学子どものこころの発達研究センターAge2企画 ま
で
0776-61-8677
※詳しくは スクラム福井HP 他機関の研修会のご案内 をごらんください
。
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発行 福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
お問い合わせ info@scrum-fukui.com
ホームページ http://scrum-fukui.com/
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