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スクラムネット メールマガジン
- Date: Fri, 10 May 2013 18:04:33 +0900 (JST)
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メールマガジン スクラムネット No.12
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【配信元】福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
【もくじ】
1..... リレーエッセイ
福井大学子どものこころの発達研究センター教授 松崎秀夫 先生より
2..... 保育士のための事例で考える発達障害児へのワンポイント
3..... 情報・話題提供
社会福祉法人 慶長会 つづきの家 より
4..... セミナー・研修会などの案内
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5月に入りました。
みなさんゴールデンウィークはどのように過ごされたのでしょうか。
5月から「こどもの日」「母の日」、6月の「父の日」と続き、
あらためて家族との結びつきを実感しますよね。
それではメールマガジンスクラムネット、12回目のリレーエッセイは
福井大学子どものこころの発達研究センター教授 松崎秀夫 先生より
お送りさせていただきます。
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福井大学子どものこころの発達研究センター 教授 松崎秀夫
このたび、
福井大学子どものこころの発達研究センター教授を拝命し、
平成24年11月1日付で着任いたしました。
私は東京生まれですが、両親の郷里は鹿児島で、
我が家の墓地も鹿児島市唐湊にあります。
それで医学部入学を志すようになってからは
九州で医師として暮らそうと考え、
昭和62年に大分医科大学に入学しました。
学生時代はできることは何でもやろうと、
野球部活動のほか、
学園祭の実行委員会活動、新聞サークル活動、
不登校の中高生の学業を手助けするボランティア活動に
参加したりしました。
神経科学に興味があったので、
生理学講座に出入りして神経生理学実験・勉強に取り組んだことなど、
楽しかった思い出がつきません。
大学での恩師の影響もあり、
医師免許を取得後は内科学を専攻して、
臨床研修で内分泌・代謝を中心に勉強しました。
当初は臨床の傍ら肥満の研究をするつもりでしたが、
大学院を選ぶ段階になると、
やはり一度は神経科学の基礎研究に取り組みたいと思い直し、
考えた末に大阪大学医学部解剖学講座の
遠山正彌教授の研究室の門を叩きました。
いま思えば人生で一番の決断でした。
大阪に行ったことを契機に神経科学研究に軸足を移し、
平成13年に浜松医科大学解剖学講座の助手を拝命しました。
浜松に着任後は、
解剖学と同じフロアにあった精神医学講座の
森則夫教授のご指導もいただき、
精神疾患の基礎研究に参入しました。
これが2度目の転機でした。
やがて留学の話が舞い込み、
2年半アメリカで暮らして帰国すると
日本では発達障害の有病率上昇が話題となり、
遠山先生と森先生のご尽力で
「子どものこころの発達研究センター」連携事業が
始まる運びとなっていました。
その枠組みの中で仕事をする機会を与えられたことを契機に、
大阪・浜松を拠点とした発達障害研究生活を経て今日に至りました。
現在では、センターでの研究活動のほか、
発達障害の研究者および支援従事者の教育、
福井大学附属病院に新設された「子どものこころ診療部」での
外来診療を担当しています。
私の専門領域は自閉症の診断マーカーの探索と
それを基にした動物モデルの開発です。
自閉症の有効な治療法は見つかっていないため、
診断がつき次第、社会に適応する教育を施すのが最も現実的な対応です。
読者の皆さん方もご承知のように、
これを「療育」と呼んでいます。
療育は早期の開始ほど効果があるので、
自閉症のお子さんには、できるだけ早いうちに
療育の機会を与えなければなりません。
それで、自閉症臨床の現場では
早期診断を補助するマーカーの開発が望まれています。
これまでの探索の結果から、
私は自閉症のお子さんの血中脂質に
特有の所見が広く共通していることを発見し、
国際特許を出願しました。
今は、この所見が乳幼児の早期診断に使えるかどうかの検証と、
この所見が自閉症のお子さんに生じるメカニズムの解明に
最大の興味を持って研究を進めています。
内科医からのスタートでしたので、
発達障害の診療にずっと従事されている先生方の経験値には
かないませんが、
代謝・内分泌・肥満や神経科学の基礎を勉強していたおかげで
自閉症と脂質の関連に関心を持つことができました。
福井では、こうした経歴を自分の財産として
今後に活かしたいと思います。
最後に少しだけ、
自閉症の原因についての自分の考えを述べます。
自閉症のお子さんをお持ちの親御さんには
「自分の育て方が悪かったからではないか」
とお悩みの方がおられます。
これまでの研究成果から、
有力な自閉症の原因の候補として
様々な遺伝要因・環境要因が取り上げられるようになり、
多くの自閉症仮説がありますが、
全てが出生前の妊娠中の出来事に基づくものです。
出生後の環境が自閉症をより悪化させることはあっても、
生物学的な原因とする仮説・証拠は一切ありません。
くれぐれも誤解や偏見に基づく諸説には惑わされないで下さい。
それでは自閉症の原因はどこまでわかっているのでしょう。
自閉症研究でも有病率の上昇から多くの探索が試みられ、
特に原因遺伝子に関しては、
かなりの進歩があり、
多くの報告がなされました。
いくつか危険因子となる
妊娠中の薬物やウイルス感染についても
報告があります。
しかし、
いまだ大部分の症例は特発性で、
自閉症の病態・有病率の推移を
すべて単一で解釈し得る要素は見つかっていません。
なので、
現在の知見の限りでは、
自閉症が多因子疾患である印象が強まっているものの、
原因は不明のままです。
ただ、
原因不明だからといって落胆することはありません。
理解を助けるために、糖尿病を例にとって説明します。
この病気は、血糖値が上がるために血管が障害され、
最終的に神経・網膜・腎臓が傷害を受ける疾患です。
しかし、意外に思われるかもしれませんが、
その原因は未だにわかっておりません。
遺伝性の糖尿病を除けば、
肥満などで血糖値が上がるのは何故か、決定的なことが不明なのです。
ですが考えてみて下さい。
原因不明だからといって
糖尿病の予防や治療が全く進まなかったでしょうか。
実際には血糖値の上昇がわかれば診断につながりますし、
診断がついても食事療法や血糖値を抑える薬剤の処方、
あるいはインスリン注射によって
糖尿病には十分対応できます。
自閉症研究にいま求められるのは、
様々な病態を統一して解釈するための「血糖値」を
見つけることなのです。
このような「血糖値」に相当する概念を
専門用語で中間表現型といいます。
いま我が国では糖尿病の有病率は10%とも言われますが、
1%以上もの高い有病率を示す自閉症にも、
広く共通する中間表現型が必ずあるはずだと考えて、
私は研究を進めています。
日夜、自閉症のお子さんの支援に携わる方々には、
大学での研究の進展がもどかしく感じられるかもしれませんが、
どうか期待をもって
自閉症研究の行く末を見守っていただきたいと思います。
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【保育士のための事例で考える発達障害児へのワンポイント】
続いてお送りするのは
保育士のための事例で考える発達障害児へのワンポイントです。
園でのいろいろな活動のなかで、
保育士さんたちが気がかりになることも多いと思います。
具体的な支援法を身につけるために、
さまざまな事例を学習して取り込んでいくことも大切です。
以下事例を参考に、少しでもお役にたてていただければと思います。
Q:保育園の5歳児ですがよくおしゃべりをするのですが、
どうも周りの子どもたちのまねをしているように思えるのです。
いろんな遊びをしていますが、
意味をわかっているのか不思議に思うことがあります。
どのように関わりを考えていけばいいのでしょうか?
A:まずはお子さんの様子をよく見てあげてください。
先生からのことばの指示ができているのか?
周りの子どもたちの様子を見ながら行動をしているのか?
見本や指差しを見せずにことばだけでの指示を出してみて、
その指示にそって行動できるかどうか見てください。
子どもたちの中には、
年齢相応の言葉を話せたとしても
そのことばの意味を理解できずに過ごしている子もいます。
もしかしたら相手の指示が入りにくいお子さんなのかも知れませんね?
だとしたらどんなところに注意をしてみていくといいのでしょうか?
1. ことばの指示だけで、理解しづらいのであれば
正しい見本を見せてあげましょう。
例えば折り紙なら黒板やホワイトボードに?・?・?というように
折り方の手順をつくり折りながら進んでいく過程を残して
視覚的に見せてあげることも方法の一つですね。
2. 折り紙や描きかたのヒントを机の上に用意して、
実際のものを見ながら進めるのも方法です。
3. ハンカチおとしなどのゲームなどは、
最初にモデルを見せてから、一緒に行動して
成功体験をできるようにしてあげましょう。
4. 抽象的な説明ではなく、
具体的にわかりやすくして示してあげてください。
この時期に、順序立てて行動できたり、意味を理解することで
成長の中での組み立てを身につけていくことでしょう。
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【情報・話題提供】
社会福祉法人 慶長会 つづきの家 より機関のご紹介がございます。
皆様、初めまして。社会福祉法人 慶長会「つづきの家」と申します。
日頃は、関係機関の皆様や地域の皆様よりご支援、ご鞭撻賜り、
厚く御礼申し上げます。
私どもの事業所は、障がいのある方への就労支援を中心とした事業所で、
就労移行支援と就労継続支援B型の2事業を実施しております。
それぞれの事業の趣旨に則り、取り組んだ結果、
就労移行支援は厚生労働省の研究事業の対象で評価いただき、
就労継続支援B型は工賃向上計画に定めた
工賃支払目標額を達成することが出来ました。
また、平成24年4月には、
福井市にお住まいの利用者様や
地域におられる障がいをお持ちの方からの強い要望により、
「夢つづきの家」を福井市月見町に開所しました。
さて、当事業所の紹介をさせて頂くにあたり、
一番の特色として、
事業所内外問わず幅広い職種の業務を
受託していることが挙げられます。
そのため通所期間の様々な経験を通し、
職業的自立を図る際に必要な
「社会スキル」や「職業スキル」の習得が可能です。
1つの例として、昨年11月から4ヶ月間、
県のモデル事業として、芝政ワールド(坂井市三国町)にて
施設外就労を実施しました。
利用者様からは、
「就労支援事業所を利用しながら、
実際の就労の雰囲気を生で味合うことができ、
いい経験ができた」
「いきなりの就労は不安だったが、
施設外就労のようなお試し体験はありがたかった」
など、
成長した姿を語ってもらえたと思います。
職員も日々の利用者様への支援を通し、教わることが多く、
お互い仕事というフィールドにて支え合うことが多い事業所なのも
特徴の1つかもしれません。
最後になりますが、
当法人は坂井市三国町にある「三国松涛保育園」
の運営をしております。
障がい者福祉同様、乳幼児保育における課題も多々あり、
これからも皆様の更なるご指導、ご鞭撻を頂戴しながら、
両事業において福祉の幅広い可能性を探り、
新しく時代に即した事業を企画・運営し、
より社会に貢献していくことを
目指してきたいと考えております。
非常に簡単ではございましたが、
この度はご紹介いただき、誠にありがとうございました。
最後に…
人には故郷がある。
故郷には脈々と集う家がある。
ときめいて倖せを紡ぐ「つづきの家」は安らぎの家でもある。
すばらしい夢のつづきを胸いっぱいにふくらませ、
未来に挑戦する人たち。
希望にみちみちた人たちには限りない進歩と夢がある。
障がいがあっても気力は充実している。
だから薔薇色の世界が未来永劫につづく。
社会福祉法人 慶長会
つづきの家
住所:福井県坂井市丸岡町南横地10号44
電話:0776-66-6776
http://www.keichoukai.or.jp/
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【セミナー・研修会などの案内】
それでは
今年度開催予定のセミナー・研修会予定の情報について
お知らせいたします。
○ちち☆ははサポートクラブ
スクラム福井では、
発達障害のお子さんを育てられている親御さんたちの集まりを
定期的に開催いたしております。
日ごろのお子さんの様子や子育ての悩み、
保育所や学校のことなどを語り合う場を提供し、
親御さんの仲間づくりのお手伝いができれば・・・
と思っています。
主催:福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
5月15日(水):福井(県図書館)
5月16日(木):大野(スクラム奥越事務所)
7月4日(木):勝山(すこやか)
7月5日(金):敦賀(あいあい)
7月10日(水):福井(県図書館)
9月4日(水):福井(県図書館)
9月12日(木):大野(スクラム奥越事務所)
9月13日(金):敦賀(あいあい)
各会場とも10:00〜12:00までのお時間となります。
(大野開催時のみ10:00〜16:30の
フリータイム制となっております)
※詳しくは
スクラム福井HP ちち☆ははサポートクラブ
をごらんください。
○「重い障害をもつ人たちの姿勢を含めた生活支援」
主催:福井県こども療育センター
日時:平成25年6月15日(土) 13:30〜16:00
場所:福井県看護専門学校、福井県こども療育センター
講師:佐々木清子先生(心身障害児総合医療療育センター作業療法士)
対象:重症心身障害児(者)の療育に携わっている関係各機関の職員
および保護者
要参加申込。入場無料。実技使用のためバスタオル2枚持参
お問合わせは 福井県こども療育センター入所療育課 大山 まで
0776-53-6571
※詳しくは
スクラム福井HP 他機関の研修会のご案内
をごらんください。
○PECSレベル1ワークショップ(ベーシック)
主催:ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン株式会社
日時:平成25年6月22日(土)・23日(日)
場所:福井県中小企業産業大学校
講師:峯勇人(コンサルタント)
対象者:保護者や医師・教員など専門職者
基本料金:39000円
お問合わせは
ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン株式会社
まで
093-581-8985
※詳しくは
スクラム福井HP 他機関の研修会のご案内
をごらんください。
○「福井ADHD国際シンポジウム」
主催:福井大学子どものこころの発達研究センター
日時:平成25年6月27日(木) 18:00〜20:00
場所:AOSSAビル6階607研修室
演者:Dr.Bung-Nyun Kim
(ソウル大学児童青年期医学教室准教授)
演者:Dr.Martin H Teicher
(ハーバード大学精神医学教室准教授)
座長:友田明美
(福井大学子どものこころの発達研究センター教授)
入場無料・要申込
お問合わせは
福井大学子どものこころの発達研究センターAge2企画
まで
0776-61-8677
※詳しくは
スクラム福井HP 他機関の研修会のご案内
をごらんください。
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発行 福井県発達障害児者支援センター スクラム福井
お問い合わせ info@scrum-fukui.com
ホームページ http://scrum-fukui.com/
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